from heart beat

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ロミジュリ2021 甲斐ロミオと堀内死

ロミジュリ2021感想の甲斐ロミオと堀内死編です。
吉田ティボルト・Wベンヴォ・Wマキュについてはこちらに書いてます。
thabu.hatenablog.com

 

 

 

ロミオ:甲斐翔真

公演前の特番で、イケコに「立派で堂々としている感じは逆に言うと細かい心の揺らぎは見えにくい」と言われていたけれど、全ッッッ然そんな感じはせず、言葉がなくても感情の機微が伝わってきました。オタクの贔屓目と思われるかもしれないけど、芝居良くなってた~~!!

これだけスピード感のある感情の忙しい物語の真ん中に立つって、それ相応の心情表現の激しさや軽やかさが求められると思うんです。5日間で恋に落ちて結婚して、いつメンに「もう友達じゃない」と言われその友も死んじゃって、さらに人も殺しちゃうし、いろいろ起きすぎでしょ。そりゃ最期に「人生のすべてを知ってしまった」と歌いたくもなる。

役柄的なものはあるんですけど、以前の甲斐くんと比べて感情の振れ幅が大きくなったように感じました。あっちからこっちに振れる速さと自然さも増した。0を気持ちがニュートラルな状態として、-80から+50ぐらいの幅だったのが、-150から+100ぐらいになったような感じ。

特に「バルコニー」で見せる、胸がドカンドカンときめいて、普段の自分じゃなくなるような、頬が溶け落ちちゃうんじゃないかってぐらい幸せ満点の表情は、うわーこんな顔するんだ!って新しい発見でもありました。

以下、語りたいところを(無理やり)3つにまとめて、その他の好きだったところは箇条書きで挙げてます。

 

全身からあふれる"特別な人間"オーラ

登場シーンで舞台奥側から出てくるときの、歩くたびに星屑が舞うようなキラキラしたオーラ。ロミオだ~~~!!!!って初日に鳥肌が立ちました。本人にはそのつもりがなくても、みんなが構いたくなっちゃう存在で、いつも輪の中心にいる。周囲を惹きつける無言の説得力があります。

リーダーシップがありながら、マキュベンには「俺たちがついてやらないとダメ」と思わせちゃう余白が残ってるのもずるいんですよ。それが「いつか」のあとのベンヴォとのフワフワした会話や、AEDで騙されたときのちょっと拗ねた困ったような笑顔に表れてた。AEDマジで毎回可愛かった…。

甲斐ロミオに、一点の曇りもないあの明るい声で「俺たちの王は俺たち全員だ!」「俺たちは誰にも支配されない!」って言われたら、そりゃめちゃめちゃ高まるし自然と団結するよ!争いが続く世界でみんなに自由を感じさせることのできる甲斐ロミオは、モンタギューの若者たちにとって光そのものなんだと思います。こんな朗らかで健やかな子に育ってくれてありがとう甲斐ロミオ。眩しいよ甲斐ロミオ。

でもこの特別さがあるからこそ、「決闘」で「誰が誰を好きになってもいい」って言えちゃうんですよね~。世界の常識を軽々と飛び越えてしまうところが、二幕のマキュベンにはしんどく映る。本音では自由に生きたいと思ってても、そこへ行けない。けど特別なロミオは行ってしまう。散々こっちの気持ちをかき乱しておいて罪な男だよまったく。

 

平和を見据える真っすぐなまなざし

2017年からロミジュリ見ていて、今回でやっと「愛の為に」という楽曲の重要性に気づけました。この場面、「バルコニー」の直後でこっちの気持ちはまだポワポワしてるし、動画を見てアロマテラピーを楽しむ神父っていう設定だけでツッコミどころが多すぎるので、さらっと流しちゃうんですよね…。

でも冷静になって前後の流れを見ると、ロミオは半ば勢いでプロポーズして、ジュリエットに「(結婚式のことを神父に)なんとか相談してみるよ」と言っちゃったし、ここで神父を説得できないと全てが終わるんですよね。「ジュリエットすこ!結婚しよ!」なバルコニーのテンションじゃダメなんですよ。

まあバルコニーで「ジュリエット結婚しよう!」って言っちゃってすぐ「あっ!」って口元を覆うの可愛かったけどーー!そのあとしゅきオーラだだ漏れで「結婚してください」って言い直すのも可愛かったけどーー!両家の争いの歴史を長く見てきている神父は、「愛しているので」だけじゃ動いてくれなかったと思うんです。「愛ゆえに人は道を誤る」「悩み苦しむ」だし、「愛ゆえに二人は重荷を背負う」って言うぐらいだし。

「二人の愛が実ったとき、ヴェローナにも平和が訪れる」って言葉が、結果的に神父の心を動かす鍵になったんですけど、これってロミオは予め「こう説得すれば神父様はOKしてくれる」と組み立てていたわけじゃない。「彼女のためならなんでもできる。何も怖くない」が深いところから出た気持ちだって伝わるから、「愛ゆえに人は変わることができる」「憎しみを忘れる」「争いに終止符を」に自然に至ることができたし、こちらも神父の変化を違和感なく受け入れられるんだと思います。

ここの甲斐ロミオ、切実なんですけど本当~に真っすぐな目をしてるんです。歌声も包み込むように大きくて柔らかくて、未来を切り開こうという力強さもある。生まれる前から続いてる争いが、自分の結婚ひとつで終わるだろうってだいぶ無謀にも思えるんですけど、そこを信じ切る無垢さがあるから、こちらも心を動かされる。

「僕は怖い」では「隠さず言おう死ぬのが怖い」だったのが、「彼女のためなら死んでもいい」って怖くなくなるんだよな~(ここの「死んでもいい」が思い切りのいい笑顔で、こちらとしては若干怖いんですが)。「愛の為に」でこんなに感動すると思わなかった。このあとの「エメ」も、未来の平和なヴェローナとそこで生きる人を見つめる、まさに心優しい王様のような歌声と表情でめちゃめちゃ良かったです。

 

「僕は怖い」と「憎しみエメ」

甲斐くんが大千秋楽後のインスタで「愛と死のどちらが印象に残っていますか?」って問いかけてくれてたんですけど、すいません私は完全に「死」です!(本人は断然愛と書いてた)これは陰陽だったら陰が好きなオタクの性なのか、甲斐ロミオで真っ先に思い出すのは苦悩や怒りの顔です。

「僕は怖い」でしっかり恐怖が見えているからこそ、マキュの亡骸を前にした「この世は地獄なのか」やティボルト殺害の表情、それに「憎しみエメ」の効果が何百倍にもなってるのが甲斐ロミオのすごいところだと思うんですよね。

まず「世界の王」「マブの女王」→「僕は怖い」の流れに違和感がない。「(仮面舞踏会に)絶対来いよ」とマキュに言われて返事して、マキュベンを見送るまではニコニコしてるんだけど、舞台奥から忍び寄る死のダンサーを背中で感知すると表情が変わって、ロミオの周りだけ気温が下がったような感じになる。空気が張り詰めて圧縮されて、ジェットコースターで重力がかかったときみたいな、内臓が押し潰される気持ち悪さ。ここテンションの落差がすごすぎて、情緒…?ってなりそうなんですが、この子は何かを感じられる子なんだなって説得力がめちゃめちゃありました。

東京公演の序盤でもう「僕は怖い」のフェイクにアレンジが入ってたんですけど、この「ウォ↑オオ↑オ~~~~~↓」が毎回完璧で本当に天才だった。歌が上手いなあ。

2回目の「怖いぃーーーーー!!!」に入る直前の表情を見るのも楽しすぎました。吐き出すような1回目の「怖いーーー!」のあと、上半身を持ち上げて汗びしゃびしゃの真っ青な顔で、見えない手に首を絞められてるような息苦しさを見せてからの「怖いぃーーーーー!!!」のインパクト。しかもロングトーンが最後までぶれずに上がる。歌が上手いなあ。開始時間固定したのでこちらの動画をぜひ。

youtu.be


2回目の「怖いぃーーーーー!!!」が終わって暗転するまでの表情がまた良くて!ミュヲタあるあるだと思うんですけど、歌い終わりの表情って見たくなりませんか。顔が見えなくなる最後の最後の表情まで見るのが大好きです。それによって曲の印象が変わることもあるから面白い。

ロングトーンを絞り出して顔ぐちゃぐちゃのまま終わるパターンが多かったんですけど、さらに目を大きく見開いて、浅く息を吸って、より具体的な恐怖が目の前にある表情で終わったのが何度かあって!どういうこと!?今絶対何か見えてた!って大興奮でした。良すぎ~~大好き大好き。

で、やっと「憎しみエメ」なんですが、もうね~憎しみエメは全部好き!全部好き!!
前半は赤黒い照明の中、死の激しいダンスと一緒に暴力的に吐き出すように歌って、「誰より悲しむ、その人は」のロングトーンで空間を占める白の割合が増えていくんですね(照明は青系へ変化)。音楽も、歪んだギターがギュンギュン鳴っていたのが、バイオリンとかかな?静かで厳かな音にここで切り替わります。

「ジュリエット…」と呟くと、さっきの憎しみはどこへやらで、元の純粋無垢な表情になってるんです。でも一幕のフワフワちゃんな芝居や第六感的な「僕は怖い」があったから、切り替わりが全く不自然じゃない。

ここ、堀内さんの死だと少しロミオにおののいてるんですよ。曲前半あんなにリンクして踊って憎しみに支配されていたのに、「ジュリエット…」で愛を思い出した甲斐ロミオに対して、「はあ?」みたいな、理解を超えた生き物を見た顔をしてる。死でさえドン引きさせる甲斐ロミオ。

そして「二人の魂だけは」で一気に沸点まで持っていくパワー!鬼気迫る「引き裂け〜〜ない〜〜」の声。掴んだ両腕がぶるぶる震えてるのも良かった…。かと思ったら、最後の「エメ…」は突然また白に戻るんです。ロミオにとって唯一の光であるジュリエットの尊さに加えて、彼女に全てをかけるロミオの危うさもありますよね。汗と照明で顔が真っ白に見えた。

ここ、氷水と熱湯を交互にぶっかけられたような感覚でもう~頭おかしくなるかと思いました。オペラグラスを持つ手が強張ってうまく動かせないぐらい、無意識のうちに全身緊張してた。ロミオが上手へダッシュして捌けると、やっと終わった…とホッとしてしまうぐらいでした。この捌けもさ〜重心が低くて盗塁狙ってるようなダッシュで好きです。「バルコニー」で薔薇を片手にスキップしてた人とは別人。

ロミオに限らず登場人物全員なんですけど、生まれたときから身近なところに両家の争いがあったから、心の底の底には暗いものが根を張ってると思うんですよ。紛争地帯の子供に絵を描かせると色使いが実物と違う(太陽が黒かったり)って話があるように、当たり前になったストレスにずっとさらされると、気づかないうちに心が瘦せ衰えてしまう。

ロミオがティボルトを刺したのも、逆上して自分を抑えられなくてっていうのは間違いないんだけど、それは自身の中に元々あった黒いものから萌芽した明確な意思だったと思ってます。甲斐ロミオはそんなふうに見えた。「僕は怖い」の楽しいところから一気に恐怖に至る自然さとか、鳥肌が立つぐらい凄みのある歌声っていうのが、こういう後の場面での狂気と結びついて、より強烈なインパクトを残してた。

オタクが勝手に感じたことだけど、こういう表現をしたいって理想があって、それが歌で制限されないって素晴らしいなと今回の甲斐ロミオを見てしみじみ感じました。いや分かんないけどね、甲斐くん的にはもっとこうしたいって理想があるのかもしれないけど。

ミュージカルを見るとき、歌の上手さに惚れ惚れするっていう楽しさと、その歌から感じられる何かに心が動くっていう楽しさ両方大事で。後者を存分に味わうときに、音が外れたなとか、ここ出しづらそうだなって気持ちは私にとって邪魔なんですね。だから、素人耳ですけど甲斐くんがどの曲も自分のものにしていて、歌にのった気持ちが障壁なくこっちに伝わってきたおかげで、私も心から味わい尽くせたな~って思います。

 

あとは何の脈絡もなく「好きだ!」ってなった場面を記録の意味も兼ねて書いていきます。 長い。

 

・「いつか」の甘さが良かった。「どこにいるの本当の恋人」で切なげな表情で劇場の2階あたりに向けて手を伸ばすんですけど、背が高くて見上げすぎなくていいからなのか、顎がちょっとだけ上がって目がキラキラして未来!って感じがする。

・「いつか」でジュリエットが歌ってる間、セットの階段近くで指をいじくって手持ち無沙汰にしてるところ。「まだ見ぬ恋人」を夢見てるぼんやり感が表れてて好き。 

・マキュに「ベンヴォーリオはお前が置き去りにしてきた女の子たちとは違うだろ」っていじられると、マキュの肩を掴んで「やめろよ僕は誰も置き去りになんかしてない」って否定するところのクソ真面目っぷり。だからマキュも余計にからかいたくなっちゃうんだろうな~。

・「マブの女王」でモンタ女子がロミオを順々に軽く誘惑したりボディタッチして上手に流れていくところ、ゴールデンレトリバーの子犬が顎をごろごろやられてるようにしか見えない。ロミオ自身も甘やかされ慣れてるような、しょうがないな〜って顔してるの可愛い。

・「バルコニー」の「月に誓おう」「誓うのはやめて。月は姿を変える。あなたの愛も変わる」のやり取り。ジュリエットの「誓うのはやめて」でちょっと驚いたような、なぜ?って顔になって、「あなたの愛も変わる」で微笑んで首を横に振り、そんなことないよって安心させるような優しい芝居で良い。

・モンタのみんなが「ジュリエットと結婚なんてありえない!ロミオは狂ったのか!?」と戸惑ってるのに上手からなんの心配もなく歩いてきて放つ「やあ」の朗らかさ。と、特別な男だ~~!

・冷たくなったマキュの手を握りながら絶叫する「ああこの世は地獄なのか」。目に光がなくなって引き裂かれた心を全身で表現してた。

・ティボルト殺害の前にナイフを拾うところ。そこに落ちてるって分かってたんですよね甲斐ロミオ。探さずに真っすぐナイフに目線がいく。ティボルトのこと刺す以外のことが頭にない。立ち上がって「ティボルト…」と呟くとナイフを握りしめた手だけがブルブル震えるの!体の一部だけ震えさせるの上手すぎる。

・大楽で、刺す勢いがこれまでの比じゃなくてやばかった。「ティボルト…」って呟いたロミオの頬を立石ティボが軽く叩いて煽ったの天才芝居だった。あんな殺意ビンビンの男を煽るなんて立石ティボ命知らずすぎるよ。

・ティボルトを刺したあとのナイフが血で濡れてるように見えるのは私の幻覚ですか?甲斐ロミオの芝居のせいですか?

・「代償~ヴェローナ」はいろんな芝居のバージョンがあった!顔を伏せて全く動かなかった日は、立ち上がったら下に汗の水溜りができてた。過呼吸になっちゃうんじゃないかってぐらい肩で大きく呼吸して、黒目がグラグラした表情でいたときもあった。顔を上げて体はピクリとも動かないのに汗だけ延々と垂れ続けてるときは、生きてるのか死んでるのか分からなくて不気味だった。

・「エリザベート」の木村達成くんルドルフのときも思ったけど、恐怖を感じた人が汗ビッシャビシャにかいてると、汗が爽やかな生命力の象徴ではなく、水分が重く全身に絡みついて自由を奪っているように見える。いとをかし。

・教会で乳母からジュリエットの指輪を受け取ると、もうこれだけが生きていく道だとでもいうように固く握りしめて、何度も握った手に唇を寄せる~これ良かったですね…。

・「ひばり」を歌い出すまでの表情だけの芝居が全部良かった…。行きたくない、でも行かなくちゃいけないって葛藤が伝わりすぎてしんどい。うなされる苦しそうな顔、目覚めるとジュリエットが横にいてほっとする顔、愛おしそうにキスする顔、ひばりの鳴き声を聞いて唇をぎゅっと結んで眉根を寄せて、自分の気持ちはのみこむ顔。全部良かった(何回でも言う)。

・一度部屋の出口まで行って、振り返ったときの名残惜しい表情も天才だった!目に涙が溜まってうるうるしてる~…。

・ジュリエットの死を聞かされて、体から魂が抜け落ちたような「生きる意味を失った」オーラになる。無への切り替わりがすごい。「世界のすべてが闇に沈んだ」の重厚感ある骨に響く声~この馬力が急に出るの強すぎます。

・「終わりだ僕は去る」の清々しささえ感じさせる笑顔。薬の蓋を開けて口元に持っていくまで笑顔のままグビッといくときと、一瞬死の恐怖に迷うそぶりを見せるときがあった。

・東京公演の途中までは、死ぬ直前に苦しみながら「ジュリエット…」と呟いてたんだけど、あるときからジュリエットに会える喜びを確信した微笑みで死ぬ芝居に変わって、この変化も良かった。

・カテコの挨拶も毎回良かったな~。「稽古からここまで駆けあがってきました。ここからまた駆けあがっていきます」の「駆けあがる」って表現好きです。本当に、どこまで良くなるんだろうってぐらい毎回変化があった。

・これは本当に勝手なんですけど、MAのインタビューで甲斐くんが、「(70億人がこれを理解する時代は来ないのかもしれないけど)僕は究極の正義は『赦す』ことだと思うんです」*1って言ってたのをロミジュリ見ながら思い出しました。ナチュラルボーンロミオなのか?

 

 

死:堀内將平

とにかくカルチャーショックで好きすぎた堀内將平さんの死。私が見た死(宮尾さん・大貫さん・小尻さん)の中で一番表情の芝居をしていて、オペラグラスで追いかけるのが楽しくて楽しくて夢中になってた。

表情を際立たせるためか、元の目から横に大きく広がるアイシャドウ、ライン、吊り上がった眉とかなりメイクが作りこまれてました。映画「ブラックスワン」の黒鳥を思い出した。この芸術的なメイク見て~!ご褒美写真でしかない。ありがとうございます…。

 
 
 
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イケコ版ロミジュリの死って概念的な存在で、実体のないものを踊りで表現するんだな~って先入観があったんですけど、堀内さんの死は存在自体がめちゃめちゃ人間っぽいんです。姿形がしっかりして触れそうなぐらい人型をした死。だから表情があるのにも納得でした。

逆に小尻さんの死は煙のようにユラユラと立ちのぼって、常に形が変わり続ける。触ろうとすると手がすり抜けそう。能力バトル漫画みたいな例えになっちゃうけど、空間系の小尻死と物理系の堀内死でしたね~。小尻死は「或る」で堀内死は「居る」。存在の能動性が違って、堀内死は自分の意思でそこに出現してる。今年の死のお二人は何もかも真逆で楽しかったです。

堀内死、「世界の王」の盛り上がってる若者たちからちょっと上に目をやると、セットの2階からとんでもなく怖い目でロミオにロックオンしてるし、「決闘」では序盤ティボルトやマキュにも反応してはいるけど、ロミオが登場するとやっぱりロミオしか見てない。ロミオへの執着がえぐい。

ロミオがティボルトを刺すまさにその瞬間は、正面から見て2人と重なるような奥の位置に下手を向いて立って、目は三日月形で口角は吊り上がって、ニターッと笑ってるんですよ!怖すぎ。計画通り顔してる。

組み合わせの話で言うと、甲斐ロミオと堀内死は見た目の体格差がしっかりあるんですね。ロミオの方が明らかに体が大きい。でも堀内死はロミオへの執着がめちゃめちゃに強いので、デュエダン(言い方)ではロミオと恐怖心、ロミオと憎しみといった、ロミオの中での感情のせめぎ合いがダイレクトに表現されているように感じて、そこがこの二人は好きでした。

小尻さんは手足がとても長いので、甲斐くんと実際の身長差はあっても、そこまで見た目のサイズの違いは感じなかったです。しかも小尻死は空間に溶け込んでいるかのような存在の仕方だったから、デュエダンではロミオが小尻死という空気に踊らされているように見えた。

宮尾死・大貫死と古川ロミオも踊らされてる寄りの印象だったんですね。だから相手を感じてはいるけど混ざり合ってはいないみたいなロミオと死の関係性が、甲斐堀内の組み合わせで初めて見えて、新しい扉を開いたような感覚になりました。

ロミジュリ終わってから純粋にバレエを踊る堀内さんが見たくて、所属されているKバレエの「シンデレラ」と「くるみ割り人形」のチケット取っちゃった~!来年の「死霊の恋」ではロミュオーという役をやられるそうなんですが、ロミオ?と思って調べたら娼婦と恋に落ちる聖職者の役なんですって。許されざる恋系、それつまりロミオじゃん!めちゃめちゃ楽しみです。

堀内さんと小尻さんのトーク企画の動画あるのでぜひ見てほしい~ロミジュリのオーディションの話とかしてくれてます。

www.youtube.com

 

気づいたら8600字ぐらいになってた。
2021年版ロミジュリ、行く前はこんなにハマるとは思ってませんでした。そのうちまた上演するだろうけどキャストどれぐらい変わるかな~。とりあえず日本上演15周年のタイミングでガラコンやってほしい。