from heart beat

観たものについて書いたり書かなかったりします。

ビルボードライブ raise me up!!!!

「KAI SHOUMA Billboard Live 2023」の横浜公演に行ってきました。

聴覚・視覚・味覚・嗅覚ぜんぶが上質なもので満たされて、ゴワゴワしていた心を綺麗に洗濯してぴかぴかに磨き直してもらった感じ。本当に本当に贅沢で幸せな時間だった。10月1・2日の4公演分の感想です。

金の額縁に入って歴史上の偉人みたいな甲斐翔真

 

0.オープニング

先に登場したバンドメンバーたちが演奏するジャズっぽいインストの曲。セトリの中で一番演奏が難しいらしい。会場の空気が徐々に高まって次の「Shut Up~」に直接なだれ込む展開が気持ち良かった。

1.Shut Up and Dance/WALK THE MOON

ムーラン・ルージュからじゃなくWALK THE MOONの方だったけど、甲斐クリスチャンがサティーンと見つめ合う姿や腰に手を添えて踊る姿、「shut up!」でジャンプするダンサーたちが条件反射で思い起こされて2倍楽しめた。回転するカラフルな照明に照らされる甲斐翔真の全身から「楽しい!」が溢れてて、あまりにキラキラしてて涙腺がゆるんだ。バンドメンバー(特にギターの山口さん)もめちゃくちゃ楽しそう。バンドとボーカルの一体感を全面に感じられたのはビルボードライブという会場ならではかもしれない。

2.星空輝いて/オクトーバースカイ

初っ端からテンション最高潮で客席の緊張をほぐしておいて、次で一気に聴かせる空気に持っていくのはずるい…手のひらの上で弄ばれました。

オクトーバースカイから歌うなら「星を見上げて」かなと思っていたから意外な選曲だった。停滞して折れそうになるけど最後にわずかな光を掲げるドラマチックな展開が、このライブの雰囲気にぴったりだったな。

横浜の1公演目からすでにホーマー成分強かったけど、2日目(3公演目)からはさらに役の感情がインストールされていて、私たちが知らない間に本役で上演してきた?と思うぐらいだった。「火遊びを続ければ火傷すると」の苦々しい感じや、「見ていろ必ず輝くさ」の反骨心がすごくホーマーだった。ムーラン・ルージュのクリスチャンの怖いもの知らずな若さとは違う、壁の高さを知っているけれどそれに立ち向かう強い意志がある若い歌声だった。

そしてこの曲はバンドアレンジが最高~~~~に最高!!疾走感のあるドラムが印象的で、オクトーバースカイがアニメ化したらこれがオープニングテーマになるだろうな。「死ぬほどーー」のロングトーンとラスサビの間の、うなるようなベースソロが本当にカッコいい。私はいわゆるロキノン系の音楽を一番多く聴いて育ったので、ウワーッと血が騒いで拳を突き上げたくなった。

3.最後のダンス/エリザベート

「甲斐翔真はトートがやりたいらしい」ことは知ってたけど、選べるなら個人的にはフランツ希望なんですよね。人外より人間の役(しかもしんどい役)で輝く役者だと思ってるから。

それがさ、こんなクオリティの「最後のダンス」をお出しされたら…甲斐トートがいいです!!!!に手のひらクルーしてしまうよ!そもそも平熱高めで健やかな生命力が甲斐翔真の特長だから、あんな妖しいオーラをまとうところを見たのは初めてで震えた…。マイクスタンドを指先でなぞる扱い方もたいへん良かったです。

これまで私が劇場で見たことのある古川雄大・山崎育三郎・井上芳雄トートは、死神と人間の2種類の配合バランスがそれぞれ異なる3人だったけど、甲斐トートはそこに野獣という新しい要素が混ざっているように感じた。口からキバがのぞいてて、「あなたは彼を選んだ」で毛を逆立ててイライラしてるイメージ。もし実現する日が来たら、韓国のような短髪トートがいいな。

バンドアレンジになったおかげか、序盤はクラシカルなミュージカル歌唱、サビからはロックな吐き捨てる系の歌唱というふうに、声の使い分けが明瞭になっていて最高だった。歌い方は古川くんのトートっぽいところが多かった(♪最後のダンス前の休符・♪踊るさぁだめぇ~の巻き方など)。ルドルフをやりながら耳で英才教育受けてたんだろうな。でも1番終わりの吐息は完全に育三郎さんのトート。「ハァ~~……」するのはいいけど、「やってやったぜ」って感じでニヤリとするからせっかくの色気が台無し(笑)。

照明も凝っていて、前奏で上から垂直に落ちる4本のスポットライトがトートダンサーに見えたし、サビでビカビカ照らしてくれるのもカッコよかった。

4.So Close/映画「魔法にかけられて

魔法にかけられて」を見たことがないので思い入れがなくて、割とするっと聴いて終わってしまった曲。ただ歌詞がめちゃくちゃロマンチック…これをリクエストから採用する甲斐翔真もやっぱりロマンチストだよなあ。ディズニープリンスそのものに見えた。

ピアノの佐藤さんとタイミングを合わせるために下手を向く頻度が高かったんだけど、このとき佐藤さんに投げかける目線が甘々で良すぎて…下手はご褒美席でしたね…。

5.真夏の果実/サザンオールスターズ

大阪公演のMISIA「Everything」から差し替わった曲。サザンの45周年ライブで本物を見て「ビルボードで歌いたい!」と影響され、ライブ帰りに佐藤さんに即連絡してお願いしたらしい(笑)。そういう行動力と素直さが、彼が周りから愛される理由のひとつだと思っているよ。

「クラウディア」で物語を背負った状態で歌うと「今この愛を君に伝えないと心臓が破裂して死ぬ!」ぐらいのビビッドさがあったけど、今回はライブ仕様で自分の世界に没入して歌っているのが良かった。「好きと言ってぇ↑」「 連れて行ってぇ↑」の歌い方が大好き。

6.車の中で隠れてキスをしよう/Mr.Children

とにかく歌いたいからセトリに入れたと話していた。これも知らない曲だったから思い入れがなくてふんわり聴いてしまったな。でも心底気持ち良さそうにフェイクを入れる甲斐翔真は見てて楽しかった。

7.One Song Glory/RENT

本公演とは違うピアノアレンジで。ロジャーの不安に伴奏が寄り添ってくれてるみたいで、優しさのあるOne Song Gloryになっていた。

3公演目の曲終わりのMCで「物語の中だとロジャーは一人で苦しんで揺れているけど、いま自分がビルボードライブというステージでこの曲を歌うことで、そんなロジャーの苦しみが報われたような気持ちになった」と話してくれた。私はいつも劇中のロジャーの感情をなぞりながら聴いていたので、役の内面を引き継ぎつつ今とリンクさせる甲斐翔真の感性が新鮮で、素敵だなと思った。

このMCを踏まえて見た4公演目では、RENTプレビュー初日の前日に亡くなったジョナサン・ラーソンのことも自然と頭に浮かんできた。後世に残る栄光の歌を求めていたロジャー、傑作の評価を自身の目で見ることなくこの世を去ったジョナサン・ラーソン、約30年後の今、甲斐翔真がロジャーの葛藤をライブのステージで「報われた」と言ってくれたことの3つが繋がって、劇中で聴くOne Song Gloryとはまた違う感動が押し寄せた。これからも色んな場面で歌い続けてほしい。

4公演目のMCではRENTの裏話もしてくれた。RENTでもバンドマスターを務めていた佐藤さんが、この曲の直後に入るミミのノックで次の「Light My Candle」の拍を取ってるんだよ、ノックをきっかけに演奏が始まるんだよと教えてくれて、思わず素で「へーー!」って大声が出ちゃった。あのノック、実はめちゃくちゃ重要だったんだな。
甲斐翔真の裏話は「Your Eyes」に関するもので、死にそうな恋人の前で、自作の曲ができたから聴いてくれ!って落ち着いて弾ける?いや弾けないだろ、だから失敗しても大丈夫、と考えるようになったらギターが上手く弾けるようになったと。こういう話もっとたくさん聞きたいな。

8.Your Eyes/RENT

劇中のようにギターで弾き語りしてくれた。やたら「失敗したら2度3度と聴けますよ、お得ですね!」とか「失敗するかもしれないので家のような感覚で見てください」とかハードル下げまくってて笑ってしまった。プレッシャーどんとこい!なタイプに見えるけど、このときは本気で緊張してたのかな、でも挑戦してくれて嬉しかったですよ。実際ほぼ失敗しなかったし。

弾き語りの準備でかわいいシーンがあったので残しておきますね。
角度のついたマイクスタンドや椅子がステージに運ばれてきて、甲斐翔真が持つハンドマイクをそのスタンドに差し、ギターを山口さんから受け取る作業の中で、甲斐翔真がギターを先に受け取るから片手でマイクを差さなくちゃいけなくて、でもそれに苦戦して山口さんにいったんギターを返すっていう1公演目のドタバタには思わず笑ってしまった。本人も「すいません段取りが悪くて」って苦笑いだった(笑)。
2公演目以降も、相変わらずマイクを差すより先にギターを受け取るショーマさん。山口さんが後ろで「持つよ…?」って表情で見守ってくれるのが面白くて…(笑)。結局「すいませんやっぱり持ってもらっていいですか?」ってお願いするのもコントみたいだった。でも最後には「学びました(キリッ)」と言う通り、スムーズに準備できてました。あー面白かった。

9.星から降る金/モーツァルト

ピアノとのデュエットで。男性が歌うバージョンも好きだから選曲してくれて嬉しかった。曲紹介では、この曲の香寿たつきさんの歌声を子守唄にしたい、ジブリっぽくて好きだって話をしていた。

丸いんだけど意志のある声色で、これまであまり見たことのない表現に感じたなあ。「愛とは解き放つことよ 愛とは離れてあげること」の、大切なものを大切な人に手渡すような丁寧な言葉の置き方がすごく好きだった。

10.You Raise Me Up/Westlife

山口さんのギターが素敵な音色をしているから、このギターが目立つようなアレンジをお願いしたと話していた曲。フィギュアスケート荒川静香さんのイメージが強くてひたすら壮大な曲だと思っていたけど、アコギの落ち着く音色と、甲斐翔真の下から湧き上がるような表現力のおかげでガラッと雰囲気が変わって身近に感じられた。「You raise me up」のフレーズを繰り返しながらゆっくりとピークに上っていくコントロール力がすごい。聴きながら、この幸せな時間がまさに「raise me up to more than I can be」してくれる~とクサイことを考えてしまうぐらい良かったです。だから記事タイトルにもしちゃった!あー恥ずかしい!

11.I'm Alive/next to normal

自分の持ち歌のような安定感。曲自体はアップテンポなロックで大好きなんだけど、作品内での位置付けを知っているから単純にワーッと盛り上がっていいのかいつも戸惑う(笑)。バンドメンバー含め全員がいきいきとしてて、この時間が終わってしまうのが惜しかった。

12.Hold Me in Your Heart/キンキーブーツ

ここからアンコール。1公演目から4公演目にかけてどんどん上手くなるから驚いた。作品の中で見ると、ここのローラはこれまでの痛みを引き受けて心を開いている印象だったんだけど、甲斐翔真のは単発の歌唱だからか強烈な寂しさと、相手に向かって必死に手を伸ばして求める心の叫びの生々しさが強く残った。

13.Come What May/Moulin Rouge! The Musical

ティーンとのデュエットではなくリプライズの方を英語で。この曲は英語歌唱の上手さが留まるところを知らないな…どこまで良くなるんだ…。「Never knew I could feel like this」で手を差し出したり、「Like I've never seen the sky before」で空を指さして少し上を見たり、仕草がすごく映える歌い方だった。

そして「Hold Me~」から「Come What May」の曲順に意味を見出さずにはいられなかったのですよ。「Hold Me~」は傷つけて傷つけられて、それでもあなたの手を取ることを諦めないっていう、気持ちの方向としては一方通行な曲だと私は思っていて、でも「Come What May」が次に来ることで、2人の心が相互に通じ合った未来を描き、祝福しているように感じた。クリスチャンとサティーンのハッピーエンドと、ローラとお父さんの和解はもちろん、もっと多様な、人が人を大切に思う気持ちを肯定するアンコールの2曲だった。こういうストーリーを想像して重ねることも許してくれる、懐の深いセトリだなあと今振り返って思う。

MCで好きだったところ

・ひとつのライブを作り上げるという経験ができてすごく勉強になりました。
・こういうライブで自分の今の立ち位置が確認できる(これまでの歩みを確かめられる、みたいなニュアンス)機会があるのは素敵なことでありがたい。
・(アンコールで出てきて)一人でアンコールを受けるのは初めてで変な感じがします…一人じゃないです、チームですけど!とバンドメンバーの方に手を向ける。ここ以外にも、バンドと一体になって作ったライブだというのが伝わる瞬間が何度もあった。
・(グッズ紹介で)「アクキーのミニショーマは紅生姜と同じ発音」のネタがお気に入りなのか昼夜で同じこと言う。
・お昼に食べたのはローストビーフとお米…ライスですね。一緒か(笑)。
・(ステージを端から端まで往復しながら)皆さん見えてないと思ってるでしょ?見えてますよー。飲んでますか?食べてますか?
・(上手端まで歩きながら)偵察しに来ました。
・僕の歌はBGMだと思ってリラックスして聴いてほしい、それぐらいの空気感が今回のライブは理想。そうもいかないでしょうけど(笑)。じゃあBGM歌いまーす!
・(夜公演で)次は何を歌おうかな…まあ決まってるんですけど(笑)。皆さん昼公演の人たちにネタバレされてないですか?(無言のオタクたちの反応を見て)…されてんなあwwwこれでも役者やらせてもらってるんで感情のキャッチボールは得意なんですよ!w
・時が経つのは早いもので、もう最終公演ですよ。やだなあ…よしっ!やだなって言ってるのにすぐよしっ!ってなるの情緒不安定ですね(笑)。

 

衣装について

1公演目の黒ハイネックニット×黒いダブルのジャケットがバチボコに優勝でした。ダーツ入りで少しくびれたシルエットが超〜〜似合ってた。私自身ダブルのジャケットが好きなのか、ダブルのジャケットを着こなせる人が好きなのかもはや分からないけど、とにかく甲斐翔真にダブルのジャケット着せたら勝ちです!

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コンサートもファンミーティングも、アミューズでの帝劇貸切公演(愛希れいかさんFC+アミューズ有料会員)もカレンダーイベントもやってるし、ハンサムライブで自分向けのうちわも見てるはずなのに、いまだに「自分のファンは本当にいるんだろうか…」って思ってるの、もはやオモシロの域なんですよね。

だからこそ、ファンクラブができました!と本当に嬉しそうに話していたのが印象的だった。目に見える味方を得た甲斐翔真のこれからを、変わらず見続けていきたいなーと思ったライブでした。