from heart beat

観たものについて書いたり書かなかったりします。

ロミジュリ2021 キャスト感想

2021年版ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(1ヶ月前に)終わりましたーー!!相変わらずの遅筆。
この状況下にもかかわらず、全公演止まることなく観客入れて開催できて本当に良かった。作品に関わった全ての方々にとって気の抜けない数カ月だったと思います。最後まで届け切ってくれてありがとう!!

今回で日本版初演から10周年だったそうで。これだけ繰り返し上演され続けるのって、単純に楽しいからだなーって今回心底思いました。ビカビカ派手な照明の中群舞にアクロバットにと躍動するアンサンブルチームには毎回興奮させられるし、クラシカルな曲からキャッチーなEDMまで幅広い楽曲で耳も飽きない。有り余る力を爆発させる若者と、静かに苦悩する大人。男と男の愛憎(大切)。
キャスティングについても、どんなふうに仕上げてくるのか期待半分不安半分な若手キャストと、安定感あるベテラン大人キャストが混ざってるっていうのがキモですよね~。予想のつかない化学反応が自分の琴線に触れたときの刺さり具合は、他の作品とはひと味違うものがあると思う。
トンチキ近未来設定やインスタ演出や「コギャル」だの「熟女アプリ」だの古すぎる単語への愚痴は多々あるし忘れてないけど、それを一旦チャラにするぐらいには楽しかったです。

以下、全員じゃないですが各キャストの感想です。甲斐ロミオと堀内死も入れたら1万字超えたので、この二人はなんとなく別記事にしました。

【追記】書いたよ!
thabu.hatenablog.com



ティボルト:吉田広大

RENTだとあまり注目できてなかったけど、歌うっっっまかった~。「本当の俺じゃない」はあのフェイクがないと満足できない耳にされてしまった。
野性のライオンのような迫力と華やかさがありながら、「好きなんだジュリエット」と歌うところで、こっちが彼の本当の姿だとすぐ分からせる純朴な表情がすごく好きでした。哀しみと犠牲と哀しみと哀しみのティボルト。振り上げたくないのに振り上げた拳を下ろすタイミングが見つからず、どうすればいいのか分からなくなってしまったっていう、ある種の幼さが見えて、ティボルトの抱える哀しみがむき出しで伝わってきました。立石ティボが自嘲的な表情も見えたのに対して、吉田ティボはずっと道を探して壁にぶつかり続ける不器用な面が際立ってたように思います。公演が後半になると徐々に荒々しさも加わってきた気がして、その変化を見るのも楽しかった!
吉田くんには「フランケンシュタイン」のアンリ/怪物やってほしい~吉田アンリの「君の夢の中で」で爆泣きさせられる未来が約束されてますね。

ベンヴォーリオ:味方良介

正直言うと東京公演の序盤はあまり見応えがなく、拍子抜けしたところはあったんだけど、回数を重ねるごとに彼のベンヴォーリオ像が分かるようになっていきました(初見で分かれ・分からせろよって話ではあるんだけど、新里マキュと前田ベンヴォが衝撃すぎたんだ~)。
一幕で小学生のように落ち着きなくふざけ倒す姿、「どうやって伝えよう」の「それを伝えるのはこの俺しかいない」での切り替え、ラストの霊廟でしっかり自分の足で立つ姿が繋がらなくて困惑したのが最初の正直な感想で。でも、ずっと共に生きてきた仲間を心から大切にしているからあの変化だったんだなと。一幕で本当の兄弟のようにつるむモンタトリオを見て、友のために変わるベンヴォっていう解釈が最終的にしっくりきました。
味方ベンヴォのスタンスが分かるのが、「綺麗は汚い」で乳母がロミオに「やっぱり他とは違う」と言うと、それに「そりゃそうだろ!だってロミオだもんなあ!」ってガヤ入れるところ。味方ベンヴォにとって、ロミオは誇れる友人で特別で、自然と尽くしたくなる存在なんだなってここで思いました。
ロミオのためなら何でもできちゃうんだね。ベンヴォーリオってトリオの中だと見守り役とかストッパーな立ち位置の先入観があったんだけど、味方ベンヴォは舎弟っぽいというか、ロミオを王様としてかつぎたい人なんだなあ。
霊廟では、キャピュレット夫人の「二人は愛し合っていたのよ!」で目に力が戻るんですけど、「街に噂が」や「決闘」でロミオが主張していた、「憎しみを捨て愛に気づけば平和が訪れる」が心の芯に響いたんだというのが伝わる変化でした。
モンタ卿とキャピュ卿の握手を見届けると、胸を手でトンと叩いてその手を下ろすんですよね味方ベンヴォ。これは後ろのロミオに「争いが終わり平和が戻るぞ、お前の思いは俺がつないでいくぞ」って言ってるように見えてすごく好きだった~。

ベンヴォーリオ:前田公輝

初ミュージカルだし、映像作品見てても失礼ながら歌えそうな印象持ってなかったので、声が良くてびっくり!しっかり芝居歌に仕上がってた。
一幕ってマキュが目立つ場面が多いので、ベンヴォの個性や人物像が分からないうちに終わっちゃいがちなんだけど、前田ベンヴォはそこの提示が分かりやすくて上手いなあと思いました。
簡単に言っちゃうと、大学二年生のモラトリアム期間の中をずっと生きてる。ふらっふらして調子が良くて、先のこと考えず「今この瞬間が永遠に続けばいい」と思ってる。でも永遠になんて続くわけがないことも分かってる。キャピュレットとの対立も、刺激的で暇よりマシじゃん死人出ないし、程度の捉え方をしてる、一幕までは。
それがマキュの死とロミオのティボルト殺害で一気に変わるんですね~。上手く立ち回って賢く生きてきたけど、自分の生きてた世界ってこんなふうだったのか?こんなに争いって汚かったのか?と初めて現実として捉えたときの絶望感がすごい。モノクロの楽しい世界だったのが、色づいた世界になったせいで血の赤が嫌でも目に入るようになった。この変化がめちゃめちゃ良いんですよね…マキュの亡骸を抱えた前田ベンヴォの真っ暗な目。
だから「あなたたちの憎しみが僕たちを駆り立てた」「僕たちは被害者だ」が、味方ベンヴォのようなロミオへのフォローよりも、見てる世界が突然ひっくり返ったことへの戸惑いと、必死に理解しようとするもがきの意味合いが強く見ててつらかった〜…。キャピュ夫人の「言い逃れだわ!」で明らかに傷ついた顔するんですよね。
あと会話で伝わってくる甲斐ロミオとの距離感が絶妙で好き!例えば「いつか」のあとのロミオとベンヴォの会話で、甲斐ロミオの「探しものっ♪」「いいやっ♪まだ見ぬ恋人なんだ♪」が全部うわの空で、真面目に相手にすると疲れそうなんだけど、前田ベンヴォは受け流しが上手くて腐れ縁感があって好きです。「まだ見ぬ恋人ぉ?」の、コイツまた意味不明なこと言ってんな~って飽きたテンション良かったですね。
そしてなんといっても前田ベンヴォは喧嘩が強すぎる。さすがHiGH&LOWの男。「決闘」の終盤、上手端のキャピュメンとのタイマンで一発顔を殴られた直後、あえて殴らせましたよ?とでもいうような余裕の顔でヘラッと笑って、5倍返しぐらいの腕力でもって相手を一発でのしたのが最&高でした。肩から振りかぶって殴るあのスタイル、好きなんですよね~…。
冒頭の「諍い」でも、やりあうマキュとティボから少し距離を取ってるんだけど、そのときの立ち居振る舞いが喧嘩強いやつのそれ〜〜!様子をうかがって無駄なことはしない余裕が漂ってました。
あとは、「綺麗は汚い」をアイドルのようなニッコニコの笑顔で踊ってたりとか、「マブの女王」でジャケットを腕が半分見えるぐらいまで脱いで、半袖から見える肌でロミオをふざけて誘ってたりとか、なんだそれ可愛いな!っていう場面も多かった。魔性じゃん!!
前田公輝くんにはぜひRENTのマークをやってほしい。

前田・味方の一番の違いは、争いや憎しみに明確な根拠がないことを分かってるけど分かってない振りをしているのが前田ベンヴォで、味方ベンヴォはマジで何も分かってない、ってところですかね。

マーキューシオ:大久保祥太郎

めちゃめちゃ中指立てるし舌もめちゃめちゃ出すマーキューシオ。ちゃんと狂気的でちゃんと仲間思いで、バランスが良いなーと思った。賢そうなマーキューシオっていうのが新鮮でした。思春期も反抗期もすっかり終わって、自分の抱えるモヤモヤをきちんと自己分析できた上で、環境のせいで暴力に向かってしまう虚しさがあった。甲斐・前田・味方よりも、精神的に早く大人にならざるを得なかった人なんだなと。こじらせてるんじゃなくて、真っすぐねじ曲がってる。
一番印象に残ってるのは死ぬ直前の手の芝居の細かさ。体が動かなくなりつつある中で、最後にベンヴォの手を掴みたくて手探りで求めて、ベンヴォもその手を掴もうとするんだけど、手が触れ合う直前にマキュの手は床にぱたりと落ちてしまう。ベンヴォの手からすり抜けていった命の重み…こんなんベンヴォにとってはただのトラウマでしかないですよ!!?このときは前田ベンヴォだったので、絶望顔が一層つらく見えました。
ひとつ言うとしたら、仮面舞踏会で一回捌けて戻ってくるとき、一発やったった~ってスッキリした顔でチン〇ジを直すの最悪で笑うからやめてほしい(褒めてる)。

マーキューシオ:新里宏太

動きの機敏さがまさに私が思うマーキューシオ。セットの2階によじ登ったり階段駆け上がるのがめちゃめちゃ速かった。歌も上手くて、「マブの女王」の「分からないさ誰だか」の「だ」を上げるアレンジもカッコよかった〜!
表情や仕草がいちいち決まるので、この場面のこの動きが好きって細かいポイントがたくさん見つかるタイプの役者さんだと思います。「ヴェローナ」の歌い出し直前に舌を出すのとか、仮面舞踏会で女の子に見せる、猫被った一見誠実そうでセクシーな笑顔とか、ナイフを構えたときに上げる逆の手と緩まった膝、全身のシルエットとか好きでしたね。女の子に対しては、大久保マキュは最初から遊びだって分からせてくれるからまだ善良だけど、新里マキュは一人一人に誠実に接しておいて切るときには容赦なさそう。
ロミオやベンヴォといても心の奥底の孤独は完全には埋まっていなくて、何かを誤魔化すように生きてる人なんだなっていうのがざっくりした印象。なんだろう、あの渇いた欠落した雰囲気は新里さん本人から醸し出されていたのかな。なので「マーキューシオの死」の、伝えたいことが次々こぼれ出てくる感じがバラバラな心を表してるようですごく良かった。

大久保・新里は、争いに意味がないのを分かってるのは同じなんですけど、それでも破滅願望的にアクセル踏むのが大久保マキュで、こうするしかないと傷つきながら進んじゃうのが新里マキュだったかなあ。精神的な傷の種類も、大久保マキュは切り傷擦り傷で、新里マキュは打撲や青あざが多い印象…(痛そうな例えですみません)。

モンタトリオの違い

甲斐ロミオ・前田ベンヴォ・新里マキュ

一番好きな組み合わせだった!マキュベンのクソガキ度とロミオの自由度が強くて、三人とも横並びの同じ速度で成長してきた感じ。飛んでいく甲斐ロミオ(風船)の紐と新里マキュ(狂犬チワワ)のリードを持ってる前田ベンヴォ。

甲斐ロミオ・前田ベンヴォ・大久保マキュ

正三角形の絶妙なバランスで成り立つ三人。マキュベンは子供っぽさより悪友感が前面に出る。大久保マキュが早熟なおかげで、甲斐ロミオはよりのびのび健やかに育った感じ。前田ベンヴォのモラトリアム感もさらに増す。

甲斐ロミオ・味方ベンヴォ・新里マキュ

マキュベンでロミオというトップをかつぐ気満々だけど、ロミオはトップにこだわりがない。甲斐ロミオと新里マキュが思春期でカリカリしてる時期があっても味方ベンヴォのボケに何度も救われてそう。


あと今回はそれなりに回数見たので、アンサンブルキャストもしっかり見る余裕があった!特に仲田祥司さんと平井琴望さんが好きでした~キャピュレット推しです。群舞での仲田さんの密度あるキレキレダンスはずっと見ていたかったし、猫目美人の平井さんがモンタを睨むときの表情も怒りに燃えてて強烈だった。
「今日こそその日」の男性陣が両腕を広げて、その腕に女性陣が掴まって膝で歩くあの振付が大好きです〜!キャピュレット卿の借金がかさんでいると知ったときのみんなのリアクションも可愛い。おでこに手を当てたり、呆然としたり。

甲斐ロミオと堀内死の方も書きかけなのでさっさと完成させます…。