芸劇シアターウエストとシアターイーストに違いがあるなんて知らなかった
先日、東京芸術劇場で開催された劇場ツアーに参加してきました。
回ごとに内容が微妙に異なるんだけど、私が行ったのはコンサートホールに入れる回。劇場施設全体の話も聞かせてもらえて、とても楽しかったです。芸劇がさらに身近に感じられました。
そんなツアーのスタッフさんの解説で気になる情報が。
スタッフさん「シアターウエストとシアターイーストはそれぞれ特徴があります。
シアターウエストは額縁のようなパネルとセリの機構があり、現代的なお芝居に向いています。
シアターイーストはパネルなどがなく真っ暗な空間で、自由度が高いです」
私「え!!!!シアターウエストとイーストって同じ劇場が2つ並んでるんじゃないんだ!!!!????」
一応、一番好きな劇場は東京芸術劇場な私、己の視野の狭さを恥じる。ほぼ同じ劇場が2つ並んでいるのだと本気で思ってました。ウエストの額縁型のパネルなんて今まで一度も気にしたことなかった…。
ていうか、自分が劇場に足を踏み入れたときって、せいぜいステージの横幅・座席の配置・傾斜・天井の高さぐらいしか気にしていないかも。
後から劇場公式サイトを確認してみると、それぞれに特徴があるというのがしっかり書いてあった。最大座席数も結構違うんですね。
設備ベースでの違いがあるのは分かったけど、見る側としてはあまり実感がわかないのが正直なところ。
そこで、これまで見てきた作品から2つの劇場の違いを考えてみたいと思います。「こういう演出がしたいからこの設備の劇場でやりたい」みたいな使う側の条件は分からないけど、観客目線で振り返ったら楽しいかもしれない、私が!
シアターウエストで見たもの
- 2015年3月「遠ざかるネバーランド」
- 2015年11月 DisGOONie「NEW WORLD」
- 2015年11月 DisGOONie「Cornelia」
- 2018年12月「スリル・ミー」
- 2021年2月 イキウメの金輪町コレクション 甲プログラム
- 2021年2月 イキウメの金輪町コレクション 乙プログラム
- 2021年2月 イキウメの金輪町コレクション 丙プログラム
- 2021年4月「スリル・ミー」
- 2021年7月「クロードと一緒に」
- 2021年11月 二兎社「鴎外の怪談」
並べてみて気付いたけど、セリを使った作品はこの中にないかも…?
「スリル・ミー」がイーストじゃなくてウエストなのめちゃめちゃ分かる~~!だだっ広い空間のイーストよりもパネルがあるウエストの方が合いそうじゃないですか。床が開いて稼働する今の演出はどちらでもできるのかな。
「クロード~」でも言えるけど、額縁型のパネルがあることで、ウエストはイーストより人工物っぽい空間になっている気がする。切り取られた画になるから、距離や時間的に観客と地続きの日常というよりも、その物語の世界に入っていく感覚が強いのかも。
シアターイーストで見たもの
- 2015年8月 SP/ACE=project「WORLD」
- 2016年4月 モダンスイマーズ「嗚呼いま、だから愛。」
- 2016年8月「宮本武蔵(完全版)」
- 2017年2月 空想組曲「どうか闇を、きみに」
- 2018年5月 イキウメ「図書館的人生vol.4 襲ってくるもの」
- 2018年7月 二兎社「ザ・空気ver.2 誰も書いてはならぬ」
- 2018年7月 モダンスイマーズ「死ンデ、イル。」
- 2019年6月 モダンスイマーズ「ビューティフルワールド」
- 2020年2月「エブリ・ブリリアント・シング~ありとあらゆるステキなこと~」
- 2022年1月 モダンスイマーズ「だからビリーは東京で」
- 2022年5月 イキウメ「関数ドミノ」
イキウメは金輪町コレクションだけウエストで他はイースト。シアタートラムでも結構やってますよね。
モダンスイマーズはずっとイースト。ウエストのところで書いた「額縁型のパネルがあるから作品の世界が切り取られた画・物語として見えやすい」という解釈からすると、客席とステージの隔たりをなくせるイーストは、モダンスイマーズがいつも描いている「私たちが今生きるこの世界のどこか」と合っているように思えてくる。
いつかウエストでモダンスイマーズを見るときが来るとしたら、それがどんな作品なのか逆に気になる~!
この中で四方または三方を囲む座席配置だったのは、「どうか闇を、きみに」「嗚呼いま~」「エブリ~」な気がする、記憶違いだったらすみません。
「エブリ~」は客席参加型の作品で、客席とステージに段差がなく、椅子を円形に配置して真ん中の空間や客席の間を演者が歩き回る形式だから、ウエストではできない作品だったんですね。
あと気付いたのは、イーストは「暗闇」がポイントなのかなと。
例えば「宮本武蔵(完全版)」は、武蔵が人の首めがけて刀を振り下ろす場面で終幕する。振り下ろし始めた、まさにその瞬間に照明がオフになり劇場が真っ暗闇になるんです。だから、武蔵がその人を殺したのか、ギリギリのところで踏みとどまったのかは観客に委ねられる終わり方になっていました。これがすごく良かった。
ウエストでも同じような暗闇は作れると思うけど、イーストの何もない「無」の空間がこの演出にはより適していたのかなあと思いました。
「関数ドミノ」は動画があるから分かりやすい。真っ暗な中に浮かび上がる究極にシンプルな舞台装置が超常的で、なんとも言えない不気味さを醸し出してる…。
いち素人観客の考えたことなので的外れなこと言ってるかもしれないけど、こういう視点で作品を捉え直すことができてとても楽しかったです。