from heart beat

観たものについて書いたり書かなかったりします。

4月総括

・クラッシャー女中
中村倫也さん、ビジュアルは黒髪だったのに劇中は茶髪で超萎えた(そこ?)
ねもしゅー、「ポリー」から突然わかんなくなったんだけど、今回もなかなかわかんなかった。「あなたのことが大好きだから、あなたの周りの環境を最低最悪にして、あなたがどうしようもなく窮地に陥った時に、ただ一人手を差し伸べる存在に私はなりたかったの」という理論はわかるけど「あなた」の人権を完璧に無視してる。そのどうしようもなさを描いてるんだなと思った。
たむけんの「人を恨めるほど僕は強くないのよ」も刺さった。そうなんだよね。人をずっと恨んだり復讐を実行するのってカロリーをものすごく使うから、メンタルと体力両方強くないとできないよね。
私は「皆、シンデレラがやりたい。」や「スーパーストライク」のような、みっともない感情博覧会なねもしゅーが好きなんだなあ。「ポリー」もこの「クラッシャー女中」も1人の狂った人間が穏やかに周りを毒していく話で、私が期待してたエモさとは違った。(だからダメというわけではないです。ただ今回は合わなかった)夏の芸劇がめちゃくちゃ面白そうなのでとっても楽しみ!


ライムライト
石丸幹二さん、スカピンやジキハイで見たときはあまり響かなかったんだけど、このカルヴェロできました。気力に満ち満ちてるより、ちょっとしおれた方が個人的には好きなのかも。ぴろしの「軍人からのダンスの誘いは断れませんよ?」がオシャレで沸いた。なんだその誘い文句は。
実咲凜音さんのバレエが美しくて美しくて、カルヴェロがこの踊りを見て生きる気力にしていたという説得力があった。スキル的な部分は分からないけれど、可憐で自由でテリーにとって踊ることは生きることだと表現するようなバレエだった。テリーがこんなに輝いて見えるのって、私たち観客がカルヴェロの目を通して見てるからなんだろうね。そういうフィルターをカルヴェロと共有してるとしか思えなくて、それを実現してる石丸さんの芝居や演出全ての効果含め素敵だった。セピア色で「哀」って感情が中心にあるんだけど、どこか爽やかで可愛らしくて、スノードームとか繊細な細工が施されたオルゴールのような後味の作品だった。


・いつか
youtu.be

藤岡正明さん、元々の実直な雰囲気と、テルの罪悪感や虚しく生きてる姿が相まってもうしんどいダメ。テーマ曲の「うつしおみ=現人」が良すぎました。「今日もまた生き延びた なんとか一日やり過ごした」という歌詞と、諦めと後悔をはらんだ声が響いて鳥肌がたった。
どの曲も本当に良かった。弦楽器の柔らかくて深い音色が、いろんな事情を抱えたこの作品のキャラクターみんなを包んでいるようだった。それぞれが思い合ったり反発したり、怖くて触れられなかったり、勘違いして傷つけたり、それぞれいろんな苦しみがあるんだよ…。特に部長が自分の娘のことをテルに打ち明けるシーンがやばかった。娘のことを抱えながら生きていく強さと、現実の虚しさがあってのあの振る舞いなのかとすごく納得した。傷つきながらも過ぎていく時間になんとなく身を任せたり、苦しくてもなぜか生きていたり、そういう「しんどさと平行にある日常」がすごくリアルだった。どうにもならない苦しみを抱えても人は生きていられる。それは強さだったり逆に逃げなのかもしれないけど、まずそこにいることを愛したくなった。
佃井ちゃんがアフトで「登場人物が8人だけで、それぞれに感情移入できて全員が愛おしくなりました。いつももっと人数の多いお芝居に出ているので」って話してて爆笑した。◯田ですね。
ConSeptさん、グーテンバーグも面白かったし、カルチケだったり字幕上映だったり取り組みが素晴らしいので今後も応援したい。アフトの手話通訳もすごかった!


・た組「在庫に限りはありますが」
面白かった!生きてると他人にも複雑な事情や戦っていることがあるって忘れてしまいがちだけど、そういう秘密なところをひっそり覗き見ているような体験だった。
ずっと芝居と言葉で「ハンバーグ」を観客に想像させまくり、ここぞというタイミングで本物を出してそれを食べるシーンがあるんだけど、その食事シーンが気持ち悪いぐらいに生々しく、想像していた時間が長いぶん嗅覚が敏感になっているみたいでちょっと吐きそうになった。徳永えりさん、映画やドラマでよく見てたんだけど、トンチキ理論でも彼女が話すと妙に納得してしまう感情の強さが好き。リナの「家族になったからセックスできなくなっちゃった」理論、分かる気がした(結婚してませんが)。後半のサスペンス的な展開とそれをぶち壊すラストに完全に心を弄ばれました。天才。


・クロードと一緒に
前回から演出もセットも大きく変わっていて驚いた。前回は重くなりすぎることを避けて、ちょいちょいクスッとするような会話も挟まれてたけど、今回はとことんイーヴを追い詰めて追い詰めて戦わせていた。物理的には近いのに、こんなに登場人物の感情を遠くに感じることってあるんだと衝撃的だった。イーヴからあんなに感情をぶつけられたのに、同時にあんなに拒否されるって、ショックだった。
誰にもわかってほしくなんかない!という独白なのに、独りよがりに見えないのがすごい。前半の淡々と事実を話す形から、後半のこれは僕の主観!でもきっと彼もそうだったと思う!って畳み掛けるの…。横になった時、両手を太ももの間に挟むのが可愛いなと思ったんだけど、クロードがいたときはその手を握ってもらえたのかなと想像してつらくなった。松田凌がイーヴだったのはもちろん、松田凌の中にクロードがいるんだなと思った。イーヴとクロードが溶け合って、触れたところからお互いの愛が伝わって混ざり合ってひとつになっていくようなイメージを受け取って泣きそうになった。


・BLUE/ORANGE
見てる最中はいろいろ考えてたのに見終わったら何も頭に残ってなくて笑った。ブルースと毎日しゃべってたら誰でも病みそう。
クリスとロバートが二人きりになった瞬間、クリスがすごく生き生きとしたように見えた。シーンによってはブルースがクリスのセラピーを受けているように見えたりもした。あと照明がブルー、白、オレンジでそれぞれ意味があるんだろうなとか、オレンジを食べる、食べないとか、奥が深そう。権力を持つ頭がいい人が必ずしもその場の主導権を握るわけではないというのが面白かった。